12ヶ月の名刺入れストーリー【7月】オークの名刺入れ
7月の誕生木「オーク」の名刺入れを、母へ贈ろうと思った理由。
最近、仕事が少しだけしんどい。
うまくいっていないわけじゃない。
30歳も近くなって、仕事もある程度はできるようになったと思う。
周りから見れば順調なのかもしれない。
でも、なんとなく気持ちが乗らない日が増えた。
朝起きて、会社へ行って、仕事をして、帰って寝る。
毎日をこなしてはいるけれど、どこか心だけが少し置いていかれているような感覚があった。
そんな最近、母のある姿を見た。
私の母は、昔から「普通のお母さん」だった。
子どもの頃からちゃんと育ててくれた。
特別会話が多かったわけでもないし、友達みたいに何でも話す親子でもなかった。
でも、私は母が好きだった。
きっと世の中にたくさんいる、普通の家庭の、普通のお母さん。
そんな人だったと思う。
子育ても終わり、自分の時間が増えたからだろうか。
昨年、母から一本のLINEが届いた。
「今までやっていた営業事務のパートを辞めたよ。」
そして続けて、
「小さな飲食店を始めることにした。」
正直、驚いた。
母が飲食店?
今までそんな話、一度も聞いたことがなかった。
今年の初め、久しぶりに実家へ帰った。
近所を歩いていると、小さなお店の前を通りかかった。
カウンター越しに料理を作りながら、お客さんと笑顔で話している母がいた。
その顔を見た瞬間、少しだけ足が止まった。
今まで見たことのない母の顔だった。
楽しそうだった。
本当に。
後から父に聞いた。
「ほとんど休まず店をやってるよ。」
別にお金に困っているわけでもない。
むしろ父は、
「最近、笑顔が増えた気がする。」
そう言っていた。
その話を聞いてから、母が今までとは違う人に見えた。
いや、違った。
母はずっと同じだったのかもしれない。
ただ私は、母の「母親としての顔」しか見てこなかっただけだった。
母にも好きなことがあって、
夢中になれるものがあって、
誰かと話して笑う時間があって、
仕事を楽しむ一人の人だった。
それから少しずつ、自分の仕事との向き合い方を考えるようになった。
仕事は頑張るもの。
そう思っていた。
でも、母を見て思った。
もしかしたら仕事は、夢中になるものなのかもしれない。
気がつくと、以前より自然に仕事に向き合っている自分がいた。
やらなきゃ、ではなく。
やってみたい、と思える時間が少し増えていた。
そして今月、7月。
母の誕生日がやってくる。
今年は、7月の誕生木である「オーク」の名刺入れを贈ろうと思う。
オークは、古くから力強さや誠実さ、そして人を支える大きな存在の象徴として大切にされてきた木。
まるで母みたいだと思った。
そして名刺入れには、母のお店の名前を刻印してもらうことにした。
言葉にしなくても、ずっと静かに支えてくれていた人へ。
ありがとうを込めて。
今年の7月は、オークの名刺入れを贈ろうと思う。





